2005年11月20日。良く晴れたいい天気。ただし気温は低め。風はちょっとありましたね。でもマラソン走るにはなかなかのコンディションでしょう。高橋尚子選手ですが、2003年はまさかの失速。2004年は骨折で欠場。で、あっという間に2005年になってしまいましたが、とうとうこの日がやってまいりましたよ。
東京国際女子マラソンのサイト
http://www.asahi.com/tokyo-marathon/
前日になって、高橋選手は足の肉離れの報告をしていたので、大丈夫かなあ、走れんのかなあという気はしていましたが、赤い上着に黒いズボンのアシックスのウインドブレーカ姿で国立競技場のトラックに現れてくれましたよ。
「2年前に止まった時間を動かしたい」
なるほど、やはり時間は誰にでも同じように流れているわけじゃなかったんですね。私も近ごろ薄々そんな気がしてたんですなあ。
楽しいとき、忙しいとき、時間はあっという間に過ぎてしまうけど、悲しいとき、ヒマなときはなかなか時間も経ってくれませんからね。
で、最悪の場合は止まってしまうんですね。
こういう競技場にマラソンを見に来ると色々面白いんですが、スタート前って会場に設置された計時用の時計は、あと何分でスタートになるかをカウントダウンしているんですよね。つまり時間が逆行してるんです。20分00秒だった時計が徐々に15分、10分と逆走していって、5分前を過ぎてからゼロセットされます。そして3分前ごろになって、やっと選手はスタートラインやや後方に並び、スタートの瞬間を待ちます。
はたして時間って、唄の文句じゃないですけど、川の流れのように過去から未来に流れてるんでしょうかね。それとも光のような明るさで未来から降り注いで来て、あっという間に今を過去に押しやってしまうんでしょうか。そうして残された人間は今にしかいられないわけですね。
さて、今回のレースは国際の部119名と市民の部342名の合計461名が同時スタートなため、ものすごい人数です。競技場にも去年に比べて大勢の観客が来ておりますが、増えた市民の部の身内の方ってわけじゃなくて、基本的には高橋選手を見ようって言う人達だと思われますね。高橋選手が優勝する瞬間を観たくて集まってきてるんだと思います。
でも、足の具合が相当悪くて、途中リタイアということになれば、場合によっては引退もありえるような、そんな雰囲気だって全然ないとはいえないわけで、もしかしたらこれが選手としての高橋尚子を見る最後の機会かもしれない。私はどこかそんな気分を持ちながら、マラソンの練習をコツコツとしてスタートラインに立つことの意味を良く知っている460名のトラックに並ぶ大勢の選手達とその最前列中央に立つ1名の31番を観ていました。
スタートの時間が1分前、30秒前と刻々と近づいてきますが、計時用の時計は00:00:00のまま止まっています。用意の合図とともに選手達は前傾をとり号砲を待ちます。それぞれのランニングウォッチに手がかかっています。
一瞬の静寂。すべてが止まる。
そして号砲とともに時間が動き出しました。