はじめての上海、わくわくよりも直前に小泉首相の靖国神社参拝があって、日本人が街をジョギングするなんて大丈夫かなあ、とにかく地味に目立たないようにグレーの上下のウエアにして、などとまるで危ない場所にいくような気分でいたのがほんとうに恥ずかしい。たしかに仕事や飲みの席で聞いてみれば、シャオツェン・ツォンイーラン（小泉純一郎の中国読み）は嫌い、という人ばかりだが、それと日本人全体が嫌いかどうかは別の話、街を歩いていても服装や持ち物、目つきからすぐ日本人だと分かるらしいのですが、厳しい視線を感じたことはありませんでした。そればかりか、朝のジョグで道を聞いたりしても親切に丁寧に教えてくれて、ああー、ぼかあバカでした、怖がったりしてごめんなさい、ありがとう、謝謝。

朝5時、前夜は隠忍自重したので体調良好です。まだ真っ暗な窓外に戦きつつホテルを出て、おおむね4キロほど離れている「世紀公園」にむかいました。ホテルは浦東（プトン）新区という新興の開発地域にあります。カルフールや「デカスロン」というスポーツショップがあったり、ガードマンのいる高層住宅があってアジア的というよりどこかアメリカ的です。車道と歩道はかっちり分かれていて走りやすいのですが、信号があてにならないと教えられて、交差点ごとに青でもじっくり見回してから渡ります。右側通行なので、とくに左折してくる車と歩行者の事故が多いそうです。たしかに平気で横断歩道につっこんできますし逆に赤でもがんがん渡る歩行者、とにかくクラクションを鳴らす車の多いこと。

ホテルでもらった周辺の地図を頼りに、通りの名前は漢字表記もあるのですが、同じような名前に見えてしまうのでいちいち確かめながらゆっくり走ります。行く前はバンド（外灘地区）での水辺のジョギングをイメージしたのですが、上海バンスキングの舞台や租界といった旧市街は対岸にあります。橋がまだ未整備で、片道2元（30円）のフェリーが直近の手段、早々にホテルに戻らねばならないためにあきらめました。そこでホテルのある浦東（プトン）側のジョギングコースをブラウズしてみつけたのが世紀公園でした。
http://www.centurypark.com.cn/
ただし入園は有料で朝7時から、うーんとにかく往復することにしました。この大きな公園の周辺も真新しい高層マンションや、きれいに刈り揃えられた植え込み、手入れの行き届いた花壇が気持ちいいエリアです。結構走っている人もいました。ためしにすれ違いながら「ニーハオ」って行ってみたら、やはりニーハオと返してくれました。すがすがしさ倍増です。地図を見せて公園に行きたいと身振りで伝えると行き止まりの大きな壁を指差します、えーっ、からかわれてる？半信半疑で壁に向かうと、おおー、ちゃんと脇が通り抜けられるようになっていて、その向こうは造成中の土砂や石くれ、がしがし走ってショートカットできました。ありがたや、ありがたや。

6時過ぎ、世紀公園に到着、そこから大きな科技館に向かいました。ここはたとえるなら北の丸公園か代々木公園か、近代的なコンクリートの建物と緑の木々が整然、まさにジョギングスポットでした。そこからの帰りの大通りはまるで高速道路のように幅が広くて、まだ歩道はブロックを埋め込んでいる最中でした。これからどんどんきれいに整備されていくことでしょう。やはり大きな通りとランプで立体交差、これを越えるには遠回りでさんざんでしたが、おかげで現地の朝の屋台での食事をみることもできました。だいぶ車の往来も増えてきた7時半ころホテルに戻りました。

で、圧巻はなんといってもこの晩の上海蟹、訪問先の昆山（クンシャン）という郊外の街、上海蟹の名産地とのこと。ばかっと腹と背をあけて、えらを取り去ってから、黒酢のタレをちょっとつけて、すするようにいただきます。ああ、なんだか新鮮なウニのような、いやいやカニなんですけどカニっぽい匂いがまったくないぞ、そんでもってオスとメスと微妙に味がちがうんです。今回は濃厚な味のオスに軍配ですけど、季節によっても変わるそう、メスに軍配上げにまた来なくちゃね、ジョギング＋カニ、ああー、また行きたいなあ。現地駐在の方に聞いたところでは車をとめて街中でハーフマラソンもあるそうです。渡航時間は短いし、近くていいっすよ、上海。代々木ランニングクラブ（かに）ご一行様ツアー、なんていかがでしょう。和了