トップページに戻る リストに戻る
ヨヨマーク画像1
TOPHOMELISTBACKNEXT

極上のレース、えちご・くびき野50kの部

2006.11.22
ショーブン

No.1370

平成18年10月13日大会前夜11時頃、直江津駅からタクシーでホテルビジネスイン上越到着。朝4時すぎ起床即熱いシャワーでカラダを叩き起して、チェックアウトして歩いて10分ほどで100kのスタート会場「リージョンプラザ上越」へ。50kの当日受付は4時から5時、つまりは前日受付の例外的な扱い。お、近くに「松屋」が営業中、持参した冷たくなったおにぎりをカレーに漬ける絵が即座に浮かぶ。カレー大にトン汁+玉子セット、おにぎり3つ、食った食った。再び会場へ戻る。おおーっ盛り上がっている。さあ、そろそろ5時半、100kのスタート、すごい熱気、あ、アロハさんだ、どこでも目立つ人だよなあ。と肩を叩きご挨拶。「みんないまは元気なんだよね、いまはね」と一言残して、まだ暗い空のもと、集団とともに行ってしまいました。

さて、50kレースのスタート地点へのバスでの移動まで小一時間、ここリージョンプラザ上越でやることは用意してあります、取り出したつぎはぎのコース拡大図。インターネットで地図をプリントアウトしてあります。プログラムに記載されているエイドは18箇所、地名もたよりにプロットしていきます。山本葡萄園ね、あー、登りの後にあるわけね、助かるなあ。おおむね予習完了。スタートから16kまでは海岸沿いに、直江津のまちはずれからJRを渡り国道をくぐり、くびき野へ、おー、この区間は田んぼばかりかな、ふむふむこの小学校が「29.5kの関門」ね、と頭に入れました。

さて、バスに乗り込んで、しばし隣の方と歓談。どうやら長岡、地元の方、前回は100kで途中棄権、その後100kレースに何度か挑戦、今回は50kにした、とのこと。新潟中越大震災で被害に遭われて、畑もようやく元通りになってきた、震災は前回のこの大会の直後、また走れてほんとうにうれしい、「ウルトラマラソンは大人の遊びだからなあ」と。バスが海沿いに出て、「あ、あの上のサイクリングコースを走るんですよ」、と伺う。なるほど、軽いアップダウン、おっ、トンネルもある、面白そう!

30分以上はバスに揺られたでしょうか、「うみてらす名立(なだち)」に到着。すでに青空、風もあまりなく、快晴になるようです。サングラス、持って来たよな。うみてらす、は宿泊施設もある道の駅風レストハウス、大漁旗が飾られて、そろいのはっぴにキャップのスタッフがお出迎え、湯茶のサービスです。着替えたり、おしゃべりしたり、ストレッチしたり、いよいよスタート時間が迫ってきました。盛り上げるのは、100kと同じ女性MC、呼びかけにこぶしを上げて、「おーっ」、いまは元気、ですね、たしかに。

うみてらすの風力発電機のプロペラを廻って、たくさん応援してくれる人たちに手を振って。お、どうやら、振られている旗に書いてある名前とゼッケンは、みな違うぞ、これはすごい、いきな計らいだ、もしかして、ぼくのことを待ってくれている人がいるのだろうか、といい日旅立ち気分。そうこうして名立の集落を抜けて海沿いのサイクリングコースへ上がります。海がきれいだ、青いぞ、空も、ああー、いい天気(すぎる)。曇りでいいのに、などとぼんやり思いながら、スピードを上げずにじっくりペースで、海沿いを楽しみました。国道をちょっと走って、直江津港っぽいあたりをかすめて、もう海は終わりです。まだ、です、気合いいれるのは。道なり、成り行きに心をおだやかに保っています。50kという未知の世界、フルから先の7.8キロを覗きにきたのですから。

10kを54分、20kまでが52分とやや上がり気味、まあ馬なりです。直江津のまちはずれ、住宅地を抜けてたくさんの応援に「おじゃましておりまーす」と大声で返す余裕もまだあります。さあ、田んぼばかりがつづくここらあたり、100kのコースとかぶっているところです。100kの表示の10k、おおーっ、すげえよな、まだ90kあるってことでしょ、と余計なお世話。自分はどうなのよ、でふと気づくと、前を行くがにまたのおっさん、黄色いウエアが上下に揺れています。抜くよ、このときはなにか気合いが入って、近づいて、抜いた、とおっさん、「元気いいねえー、若いの」、そうかね、大しておっさんと年かわんないんじゃないの。なんて若作りな気分はまだ積極的、と「ほら、ちょうど半分きたよ、半分ねー」とおっさん。ここでおっさん放って自分に戻ります。大丈夫ね、あと半分ね。

つづくよつづく、田んぼのあいだを抜ける道。腰の曲がったおばあさんが、お疲れ様とにっこりしてくれます。「がんばれー」じゃないところがいいよな、一応、がんばってるんだから、お疲れ様、っていうのはいいんじゃない、でもさ、わざわざ好き好んで疲れてるんだよね。それにしても、視界の先、ずーっとつづく田んぼ、稲刈りもすっかり終わって青い芽吹きがひょろながく風になびいています。へへ、こちとら埼玉の田んぼで経験済み、長く見えても案外走ればすぐなんですよおだ、とまだ勝手に前向きです。

そうして、やってきました、50kコース唯一の関門、視界の前後にほかの選手の姿なく、たくさんのボランティアの方にたった一人拍手で出迎えてもらえます。「ここ、ゴールじゃないよね」と笑いを誘う余裕もまだあります。「お疲れ様です、なに飲まれますかあ?」じゃあ、麦茶をください、と3杯もいただきました。塩をひとつまみ口に入れて、その後チョコレートを放り込んですぐ出発です。地図によれば、ここから8kくらいはまあまあ平らなんですけど、38kから42kくらいに登りがつづくはず、温存していきます。追いついた小柄な茶髪の女性、サングラスがかっこいい、「足にキテませんか?」と笑いながら話しかけられ、「全身にキテますよぉー」といいながら、ちゃっちゃか抜き去ります。「キテないじゃない、うそつきぃー」とやや黄色い声を背に、ふふふ、まだ先は長いんだよ、こんなところでキテるわけにゃいかないの、とだんだん気合いが入ってきました。

つぎのエイドでは、「57番だよ!」と声をかけられました。おおーっ、399人エントリだからすげえ前じゃん、できすぎだよな、などと思いつつも、7人抜けば50位、50kレースの50位ってなんかもらえそう、などと欲もでてきました。このあたりまだ余裕があったのかなあ。

そうして見えてきました、なんとなく「山」。ボランティアがいたので、「坂ですねえー」と声をかけてみると、「長いよー」と返事。「やめてくれー、そんなこと言うのー」とひきつりながら。ああー、きちゃった、ほんとだ、ずっと登りじゃん。とここで小用。トイレがないので、コースをそれて草むらへ。ごめんなさい、許してください、長いよーなんていうからだい。さあ、ちょっと歩こう、ホント長いなあ、この坂、おおーっ、ゆっくりゆっくり走っていく選手に抜かれていきます。どうぞ、どうぞ。ぼかあ頂上まで歩くことにしますよ。まもなく頂上らしきところへ、そうか、あとは下りですよね。それから山本葡萄園のエイド、日本のぶどうは頭の上になってるけどフランスとかイタリアは腰のあたりなんだよね、とだれにいうとでもなく。マラソン(42.195k)のポイント、4時間6分、ふうむ残り7.8キロ、キロ6分で5時間ギリギリかな、いけるかな、いやいくぞ!

走りましたとも。ここを、この距離を超えてから走るために、わざわざ来たんですよ。ぼくにとっての初のウルトラマラソンです、情けないゴールはしたくない、さあ、走れ、あと6kくらいからカウントダウンモードで、されどキロ6分がいいところでしょうか、くぅー、スピードのらないねー、長かったもんなー、ここまで。でも沿道のおばあちゃんにまたやさしい笑顔、お疲れ様、あと少し、といわれて涙でそうになります。ありがとう、ほんとうに。最後のエイド、いいタイミングで給水できます。ごくごくと水を飲んで、さあ、いくぞ、ゴールまで。やっとの思いで、あと2kはかなりがんばって、右に曲がってみえてきました、ゴール、ほんとに赤いじゅうたんがひいてあります。おおーっ、きたぞ、5時間切ってる、いいぞぉー。
「東京のイグチさーん、ゴールです」、アナウンスもしてくれました。終わったー、さあ、風呂だ、風呂。もうあたまの中はビールのジョッキで一杯です。そうしたら、なんと赤いジャージー姿のボランティア女子中学生が二人も、テントのブルーシートにへたり込む自分に、「なにか飲みますか?」といいながら、手際よく背中のゼッケンをはずしてくれます。シューズのひもを解いて、チップを渡すと、冷たいおしぼりが返ってきました。ああー、聞きしにまさるぶあついおもてなし、シートのうえにはお皿にいっぱいのおにぎりも。あああー、うれしいなあ。完走証もすぐに換えてもってきてくれました、4時間55分35秒、総合53位、うん、納得納得。「お風呂にいかれますか、ご案内します」はいはい、もちろんですとも、と靴を履き替えて、彼女らに従います。こちらでーす。荷物お持ちしましょうか、いえいえそんな女性に重いものもたせちゃいけません、と断って。

風呂にざぶっと入って、シャンプーしてさっぱり。ああー、いい気分。着替える場所も広くとって、ゆっくり着替えていると、「高田行きのバスはまもなく発車します」と放送。さっさと行かねば。そうです、今日のゴールは高田駅前に「予約」までしてあるすし屋で地魚に地酒なのであります。くぅーっ。バスは40分ほどで到着、ああー、ほんとにナイスなロジスティックです、運転手さんにも丁重にお礼を申し上げて、すし屋の暖簾へと急いだのでありました。名立までのバスで隣り合った人が言ったとおり、いたれりつくせり、ぜいたくな大人の遊びでした。

画像1

上:朝5時半、100kのスタート
下:氷の器の灯。新潟中越大地震から2年、祈りの光とも見えて。


画像2

上:うみてらす名立(なだち)、大漁旗が出迎えてくれました
下:朝8時半、50kスタートの地点です


更新:2006.11.22
TOPHOMELISTBACKNEXT